柄のチュニックワンピースに目をつけた。ビニール袋から取り出して全体を眺めながら、満足げに何度も頷いている。
 澪はベッドに腰掛けたまま、目を伏せた。
「すみません……あの、私、持ち合わせがあんまりなくて……」
「気にしなくていいのよ。あとで悠人さんにしっかり請求するから」
 涼風は悪戯っぽくそう言って魅惑的にウィンクする。本当に請求するつもりなのかはわからないが、そう言われるともう何も言えなくなってしまう。どちらにしても、澪が負担を感じることのないようにという気遣いなのだろう。
「これでいいかしら」
 澪が考え込んでいる間に、涼風は選んだ衣装をベッドの上に広げていた。先ほどのチュニックワンピースとレギンス、それに下着の上下までもが置いてある。どれも自分では選ばないようなデザインだが、決して嫌いではない。はい、と素直に頷いて立ち上がった。
「着替え、手伝いましょうか?」
「いえ、ひとりで大丈夫です」
 手の怪我を気遣ってくれたのだろうが、指は普通に問題はない。それに——。
「あの……着替え、見られたくないので……その……」
 どう伝えればいいのかわからずしどろもどろになるが、涼風は何かを察してくれたようで、ただ「わかったわ」とだけ答えてベッドから離れた。背中を向けてしゃがみ、紙袋から出した他の服や荷物を片付け始める。
 澪は安堵の息をつき、涼風に背を向けてジャージを脱いだ。
 胸元にも、腕にも、内腿にも、無数の赤い痣のようなものが残っている。武蔵との情事のあとにも同じような痣がいくつかついていたが、そのときはまだどういうものなのかわかっていなかった。しかし、今はもう理解している。あれだけしつこくやられたのだから気付かないわけがない。思わずそのときの感触がリアルによみがえり、ぞわりと肌が粟立った。
「私のこと、どこまで聞いてます?」
 背を向けたまま下着に手を伸ばしてそう尋ねると、涼風は少しの間をおいてから答える。
「家に置いておけない事情があって、しばらく知人のところに預けることになった、とだけ。